7/09/2016
回想〜What ACID taught me.〜
写真がなくてここ数ヶ月のブログが書けないから、また数年前の回想を書こうと思う。僕がまだ20代前半だった頃、初めて体験したLSDは僕の価値観をぶち壊し、それまでに受けてきた全ての教育を軽く上回る教えを与えてくれた。
今にして思えばアレは起こるべくして起こった出来事で、体験するべき事だったんだと思う。
僕は当時アンダーグラウンドのカルチャーやビート文学、ヒッピーカルチャーに夢中で、好奇心の塊だった。
中でもマリファナやLSDを含む向精神薬の体験談、その効用に関する物には敏感で本屋でそれらしい物を見つければすぐに買って読んでいたし、そういう世界に精通している先輩の話を聞くのが本当に楽しくて会う度にせがんでは話してもらっていた。
何故そんなに惹かれたのかは分からない、ただ新しい世界が見たかったんだと思う。
本に書かれている体験談は僕が学校で習ったドラッグに関するそれとは全然違う物だったし、彼らが綴る心の旅はハードで刺激的で、興奮と驚き、喜びに満ちた物だった。
何とかして僕も自分で体験してみたい、作家達の文章から想像していたソレを自分の体で、心で体験してみたい、そう思った僕は先輩に頼み込んで機会を設けてもらった。
リスクよりも好奇心が勝っていたんだ。
機会は突然やって来た。
先輩と二人、郊外の集合住宅の一室でLSDをやる事になった。
小さな紙片、こんな物で本当に本に書かれていた様な世界が見れるのか?そう思った。
緊張しながら口に含んだのをよく覚えている。
口の中で紙片が溶けてから30分後、ソレは突然やってきた。
明らかに素面の時とも、マリファナを吸った時とも違う感覚。体がソワソワして奥歯がガタガタ言っている。自分の周りの空気が揺れているように感じた。見慣れた先輩の顔が初めて見る人のように感じる、ちょっとした事があまりにおかしくて腹がよじれそうになる。壁に飾ってある絵を見つめると、絵の中に描かれている目が、僕を見ていた。確かに、意思を持った強い視線で僕を見つめていた。今までずっと流れていたはずの音楽も急に生命が宿ったかの様に立体的になった。音楽は立体だったのだ。スピーカーから流れる歌声が、螺旋状に旋回しながら部屋を回り僕の耳に届く、まるで耳元で歌われているかの様にクリアで、感情のこもった歌は僕の心に届きギターの弦を弾く様に琴線に触れる。何度も聞いていた曲が、まるで別の曲に聞こえる。一体今までどれだけの音を聞き逃してきたんだろう?歌詞や音に合わせて僕の感情は波打ち、それに合わせて目の前のビジョン、部屋の景色が鼓動を打つように揺れる。思考は高速回転していて、なにかきっかけを見つけて考えだしてしまえば、無限に連れて行かれる。どこまで行っても何処にもたどり着かず、ただからっぽで、これ以上いったら脳みそが弾けてしまうんじゃないかと思った。
すこし落ち着いた僕らは、外に散歩に出かけることにした。部屋を出て階段を下る。壁の汚れやシミが、うねうねと動いている。外に出ると、何度も来ているこの場所がまるで初めて来た場所の様に感じられる。遠くを走る車の音が、異様に鮮明に聞こえる。僕らは家の近くの川まで歩き、川辺に寝そべった。地面に寝そべると、体が溶けて地面に染み込んで行く感覚を感じた。呼吸をする事が心地よく感じた。空には満月が光っていて、星が煌めき、まるで僕に話しかけている様に感じる。二人で空を見つめながら話している時、今までに感じた事の無い安心感を感じた。よく言われる全てとの一体感、全ては一つだったというやつだ。僕が話す言葉の一つ一つが、世界を形作っている、僕の一挙手一投足が、世界の裏で起こる出来事に完全に直結している、僕が笑う事が、世界のどこかで誰かが愛し合う事の引き金になっている。
不完全で、どうしようもなく、ちっぽけな僕の存在が、この広大で美しい世界を形作る重要なピースで、初めからそうであり、恐れる事は何もなかった。世界は完璧で、僕は完全だった。一緒にいた先輩に、感謝と愛を感じた。僕がここにこうやって僕としていられるのは、あなたがそこでそうやって存在していてくれるおかげだよ。そう思った。
月はさっきよりも鮮やかに光り、携帯のスピーカーからブルーハーツが流れた。ヒロトの声は魂を揺さぶる。シンプルな歌詞は本質を捉えていた。気づくと僕は泣いていた。
涙を流したのは何年ぶりだろうか?目から次々に涙が溢れ、この奇跡に感動していた。これが真実だ、今まで自分は錯覚していたのだ。そう思った。
時間は体感の倍以上のスピードで流れ、気づくと東の空から太陽が昇って来ていた。空が徐々に赤く染まり、新しい一日が始まる。僕の心は、まっさらだった。生まれ変わったかの様に。否、世界そのものが新しく生まれ変わったのだ。誰かに、何かに話しかけたくなった。この世界を僕と一緒に形作っているかけがいのない、友人達に。
家に戻ることにし歩き出すと、広場で近所のおばさん達が体操をしているのを見つけた。
「おはようございます。」僕らが挨拶すると、おばさん達も笑顔で挨拶してくれた。
「あんたたちもやってく?」体操に誘われた僕らは、輪に加わった。気持ちがよかった。澄んだ空気の中、体を動かす。おばさん達も予期せぬ新メンバーの僕らがおかしかったのか笑顔で、すごくピースな雰囲気だった。世界中の人に感謝を伝えたいくらいに、僕は世界と自分の存在に感謝していたし、とにかく、興奮していた。
部屋に戻って、ハイボールを作って飲んだ。ソーダがグラスの中で泡立ち、気泡が弾けるのがしっかりと見える。トリップの影響で体は疲れていたが、心地のいい疲労感だった。
この日から僕は変わった。現実を見る目が変わり、目に見えない物を信じる様になった。今まで一切興味の無かった精神世界や宗教に興味を持ち、何より芸術が好きになった。優れた芸術家は、誰しも、あの領域に、あの認識に立っているんじゃないか、本人に自覚がなくとも、優れた作品は真理に触れているんじゃないか、そう思う様になった。
僕の人生はこの日から完全に変わった。スピリチュアルに傾倒する様になり、あの世界、認識を夢見るようになった。当然、体験はいつまでも続かず次第にいつもの僕に戻っていき、またいつもの毎日が始まったが、同時に僕の中で探求の道が始まった。以前に増して心を観察する様になり、それは時に有益で、時に苦しみを運んできた。
そして馬鹿らしい事にソレは今現在まで続いていて、僕はこの出口の見えない迷路の中を手探りで進んでいる。
全くの勘違いなのかも知れない、ただの幻覚で、僕は中二病で、端からみたらヤバいのかも知れない。それでも信じてしまう、いつかたどり着ける事を、否、何処にも行かずとも今ここで完璧だと気づける事を。
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