5/23/2016

回想〜10年前,TBHRと路上とカトマンズ〜

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10年前僕が高校生だった時、やはり僕は今と同じく’人と違う’を求めていて、服装、髪型、趣味趣向、まぁとにかく自分の選択で出来る範囲の事は、周りの友達と違う物を選ぼうとしていた。今になれば、そうやって意識して逸れようとする事自体が、極めて凡庸な事だというのは理解出来るけど、当時はとにかく”一味違う俺”になるのに必死で、それが楽しかったのだ。
そんな僕は、音楽に関しても周りの奴が聞いていないモノが聞きたくて、日々ネットでマイナーかつ自分の趣味に合うジャンルやアーティストを探していた。当時はダンスホールレゲエが全盛で、僕の周りもレゲエを聞き、中にはdeejayを始めたりsoundを組んだりする奴もいた。僕は僕でレゲエも聞いていたけど、HIPHOPが好きで、洋、邦問わず色々と聞いていた。そんなある日、ネットであるアーティストを見つけた。

『THA BLUE HERB』

最初はブルーハーツのパクリみたいな奴らかと思ったが、よく調べてみると、それが1MC,1DJのhiphopグループである事、アンダーグラウンドで絶大な人気を誇っている事、あのDJ KRUSHがフックアップし、人気が出た事が分かった。僕は興味を持ちすぐにネットでCDを購入した。何日かしてCDが届き、封を開け、コンポにCDをセットして1曲目が流れた。気づけば僕はこのアーティストに夢中になっていた。今まで聞いた事のある日本語ラップとは一線を画すトラックとラップのスタイル、北海道在住のBOSS(TBHRのMC)が荒々しくラップする執拗なまでの自画自賛とその入り組んだ表現、シーンのメインである東京に対する攻撃的な姿勢、そのどれもが新鮮で、刺激的だった。CDを買った直後一ヶ月くらいは、学校が終わって家に帰って、部屋の電気を消してTBHRを聞く事が僕の生活の中心になるくらいにハマっていた。それまで聞いていた、メインストリームのヒップホップが偽物なんじゃないかと思ってしまう程に、僕はTBHRに魅了されていた。

そんな中でもある一曲に僕は心奪われた。2ndアルバムに収録されている『路上』という曲だ。この曲は、ラップというよりは詩の朗読で、おどろおどろしいトラックの上で6分強BOSSがある創作ストーリーを語る。舞台はネパールの首都、カトマンズ。あるドラッグディーラーの日常と葛藤、そこからの逃避を描いたストーリーで、これに僕はとにかくぶっ飛ばされた。詩がこんなにも格好いいものなのだと知った。優れた比喩表現は美しいモノなんだと分かった。そして意味が分からない言葉が次々に出て来て、僕の好奇心を刺激した。
ガンジャ、マオリストの活動家、カルマ、タイパウダー、マッシュルーム、知らない言葉はネットで意味を調べ、何度も繰り返して聞いた。
僕の脳内で、見た事も無いカトマンズの街が現れ、娼婦が咳き込み、ドラッグディーラーがドラッグを捌いた。僕はこの曲をきっかけにアジアの国々に興味を持ち、同時に文学にハマった。いつかカトマンズに行って、この目で街を見る。そう思った。

そして、2014年、僕はカトマンズに行く事になった。当時アジアを回っていた友人がネパールに入るタイミングで、僕も合流し、カトマンズで過ごす事になったからだ。
カトマンズの空港に着いたのは夜で、バイクタクシーに乗り街の中心にある友人が待つホステルに向かった。初めてこの目で見たカトマンズの街は、高校生のころ僕が脳内でイメージしていたとおりに暗くて汚く、埃っぽくて、危険な匂いが漂っていた。

あの曲で知ったガンジャを吸って、あの曲を聴いた。僕の小さな夢が一つ叶った。本物の街の空気を感じながら聞く「路上」はよりリアリティーを増し、この街のどこかにカルマに追われるドラッグディーラーが本当に居るんじゃないかと思わせられた。

もしもカルマなんてのが在るんだとすれば、僕のカルマの一つは、あの日あの時、「路上」を聞いてしまった事、な気がする。




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