10/14/2015
終わりの始まり
2015年8月25日、僕はバックパックを背負って一人空港にいた。
僕は空港が好きだ。大きな荷物を持って行き交う人々、電光掲示板に映っている世界の都市の名前、両替所、チェックインカウンター、見送る人、出迎える人、飛び交う世界の様々な言語、全てが、僕は自由でどこにでも行けると思わせてくれるからだ。
でもこの日は少し違った。
数ヶ月前、日常に行き詰まった僕は数年間夢見ていた長期の海外生活と放浪を実行する事にした。渡航費を稼ぐために工場で働き、ストレスと疲れを酒でごまかしながら寮暮らしの狭い部屋で出発を夢見ていた。
半年この生活に耐えれば僕は自由で、世界を巡る旅人になれる。
気が狂いそうになるほど変わらない日常の中でそれだけが希望だった。
そしてこの日、あんなに楽しみにしていた旅が始まるのに僕は素直に喜べなかった。
遠くに見えていたはずの希望が目の前で現実になったとたん、今まで見ないようにしていた不安や後ろめたさ、孤独感、途方もない自由の重さがのしかかってきていた。
僕が旅に出る事を否定してきた人達の現実的な言葉が頭の中でループする。
大好きだった空港も今は真っ暗な穴の入り口だ。
昨日までは理想を追いかけるタフな旅人だったはずの自分は、才能も金も女も将来もない、無いものだらけの1人ぼっちになっていた。
どうするべきか迷った、どっちにしたって旅に出る意外に今の僕に選択肢は無いのに。
搭乗時間が来た。
重い足を引きずって出発ゲートをくぐり、席についてすぐにビールを飲んだ。
こんな事を考えているくらいなら酔って寝てしまった方がましだ。
すぐ近くの席ではしゃいでいる夏休みの学生達にイラつきながらビールを流し込んだ。
幸いすぐに寝る事が出来て目が覚めると飛行機は遥か雲の上。
長い一日が終わって、旅の終わりが始まった。
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