10/19/2015

SAK-YANT1〜人に優しく〜

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タイでは国内を移動する際、バスが主に利用される。
バンコク市内には3つの大きなバスターミナルがあり、国内を長距離移動する際はこのいずれかを利用する事になる。
この日僕は朝早く起きて身支度を済ませ、宿の近くの屋台で朝食を済ませるとタクシーに乗り込み南バスターミナルに向かった。
カオサンから40分ほどの場所に南バスターミナルはある。

バスターミナルは平日にも関わらず混んでいて、荷物を持った現地の人達がバスを待っている。
この南バスターミナルはバンコクの隣県から海沿いのリゾート地まで多岐にわたる行き先を網羅した多くのバスが出入りしており、表記もタイ語でされているため全くタイ語の分からない僕にはどのチケットを買えばいいのか、どのバスに乗ればいいのか皆目検討が着かない。

バスを待っているタイ人達に僕の行き先に行くにはどのバスに乗ればいいのか訪ねた。
英語が分かる人も分からない人も親身になって時刻表を調べたり、周りの人に聞いたりして僕を助けてくれようとする。
微笑みの国の人達は本当に親切だった。

数人の助けを経て、なんとかどこから乗ればいいのか分かった。
どうやら僕が乗るのはバスではなく乗り合いのバンらしい。
バスターミナルの正面から左に回った裏側に、数台のバンが止まっており近くにチケット売り場が有る。僕はチケット売り場で行き先を告げチケットを購入し、車に乗り込んだ。
運転席には体重100キロはあるだろう太った男が不機嫌そうに座っている。

僕は行き先を確認し、助手席に座った。車内は僕を含めて乗客は4人、帰郷だろうか、皆大きな荷物を持っている。
ほどなくして車は走り出した。
しばらくは窓から外の景色を眺めていたけど、次第に眠くなってきた。
運転手に僕が降りたい場所に着いたら教えてくれるよう頼み、目を閉じた。

気持ちよく眠っていると運転手に起こされた。さっきまで不機嫌だったのに満面の笑みでこっちを見ている。
「さぁ、着いたぞ。ここがナコーンチェイシーだ。」
出発から一時間、バンコクの隣県ナコーンパトムに到着した。
僕はわくわくしていた。今日僕は今回の訪タイの最大の目的を果たすんだ。
良く眠ったからだろう、頭もすっきりしている。

問題はここからだ、バンを降りて、僕の目的地であるワットバンプラに向かうバスに乗り換えないといけない。その乗り換えの場所が分からなかった。
運転手に訪ねても分からないという。
僕が自力で探す事を決めバンを降りると、後ろの席に座っていた男が一緒に降りてきた。

「ワットバンプラに行きたいんだろ?俺もここで降りるからバス乗り場まで一緒にいってやるよ。」

さすがに悪いので断ろうと思ったけど、どこもかしこもタイ語表記だらけのこの場所でタイ語の分からない僕がバス停を見つけて目当てのバスに乗るのはかなり厳しい。
彼の優しさに甘える事にした。

しばらく歩き、彼の案内でバス停に到着した。
ワットバンプラ行きのバスが来るまで一緒にいてくれるという。
この間いろいろな事を話した。

彼は僕と同い年で、普段はバンコクで法律関係の仕事をしているらしくこの日は久しぶりの帰郷らしい。しかも彼の家はここからさらに二つ先のバス停付近らしく、わざわざ僕の為に途中で降りてくれたらしかった。
彼は一人でこんなところまで来た外国人の僕に興味津々で色々聞いてくる。
何故旅をしているのか、日本はどんな所か、仕事は何をしているのか、タイをどう思うか、家族の事について。僕らはお互いのつたない英語とボディーランゲージ、僕が持っていたスケッチブックに描いた絵を使って会話をした。

異国の地で、言葉も満足に通じない全くタイプの違う僕たちが時間を共にし、互いの人生の話をする。これは旅ならではの出来事で、旅の醍醐味だと思う。
誰かと出会うってことは衝突事故並みの確率で、必然と言わざるをえない偶然だ。
そんな事を考えていた。

一時間は経っただろうか、バスはまだ来ない。海外のバスの時刻表なんてあてにならないのだ。さすがに彼に悪いと思い後は一人で待つから大丈夫だと伝えると、ちょうどトゥクトゥク(バイクタクシーの様なもの)が一台やってきた。

ジブリのアニメから飛び出してきた様な風貌のかなりインパクトのあるおじさんが運転手だ。ぼろぼろの服にサングラスに髭、トゥクトゥクには何に使うのか分からない道具がいくつかぶら下げられていて、車体には派手なペイントがしてあり車内に花が飾ってある。

「ワットバンプラに行きたいんだろ?100BHTでどうだ?」
このままバスを待つよりもこのおじさんに乗せてもらった方がいいと思い、乗る事にした。

ここまで付き合ってくれた彼に礼を言う。
最後に何となく、なぜ初対面の僕にこんなに親切にしてくれたか質問した。
彼は少し困った顔をしてから答えた
「何故って、君が困っていたからだろ。」

僕らは握手を交わし、僕はトゥクトゥクに乗り込んだ。

トゥクトゥクはぼろぼろの車体を揺らしながら走っていく。
深いしわのある運転手の首もとを見つめながら、今日受けた親切とあの親切な彼の言葉を思い出していた。

僕は無条件に人に優しく出来ているだろうか?
僕の優しさなんて打算的なもので、彼のそれに比べたら純度の低い混ぜ物なんじゃないか?

じわじわと後ろから迫ってくる僕の得意のネガティブを振り切るように、トゥクトゥクはワットバンプラに向けてスピードを上げた。

続く














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