10/22/2015

SAK-YANT2~ワットバンプラと護符〜

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ド派手なトゥクトゥクに乗る事30分。
ついに僕は目的地、仏教寺院ワットバンプラに到着した。

僕は興奮していた。ネットで見た異国の場所、しかも観光客はそう訪れないであろう場所に実際にやってきたのだ。

「着いたぞ!ここがワットバンプラだ。まず左奥の建物に入ってお布施を払ってお祈りしてもらうのがルールだからな。」
運転手に礼を言い、トゥクトゥクを降りた。
 
大きな門をくぐると敷地内には5つほどの建物があり、そのどれもがタイ仏教独特の派手でサイケデリックな装飾が施されている。
他にも敷地内の数カ所に日本ではまず見られないであろう変わったデザインの仏像や、オブジェが置かれている。

また寺院の建物があるエリアの隣には100平方メートルほどの屋台エリアがあり、食材やちょっとした食べ物を買う事が出来る。

僕は運転手に言われたとうりに左奥の建物に向かった。
中に入ると正面に仏像があり、部屋の左奥に僧侶が一人座っている。
部屋の入り口に受付の様なものがあり、そこで花と線香のセットを買い、25BHTのお布施と共に僧侶に渡し、お経を読んでもらう。
僕は周りの人の見よう見真似でなんとかお経を読んでもらった。
タイ語で読まれる初めて聞くお経が脳内でこだまする。

後で知った話だが、この建物にはこの寺を代表する僧侶だったルオンポープン師の亡がらが祀られているらしい。

最初にするべき事を終えた僕は建物の外に出た。
本番はここからだ。ネットで得た情報を頼りに敷地内右奥の建物を目指す。
不気味なオブジェを通り抜け、奥に進む。右奥の建物の軒先で人だかりが出来ている。


見つけた。

ワットバンプラは日本のお寺と比べればかなり変わった作りだが、ここタイにおいては一般的なごく普通のお寺だ。しかし決定的に違うところが一つある。
ここでは、僧侶による伝統刺青、サクヤンの施術が行われているのだ。
僕はこのサクヤンを手に入れる為にここまでやって来た。

サクヤンとは、、
タイで一般的に見られる幾何学模様や動物をモチーフにしたタトゥーで、一見して仏教関連だと分かるものだ。施術は特殊な秘技を身につけた僧侶やアチャーンと言われる人のみが行う事が出来、一般的なタトゥーと違い宗教的側面が強い。
サクヤンを体に刺れることで運命を変える力や悪い宿運から逃れる力、また悪霊から主人を守る力が宿ると信じられている。
タイではサクヤンを入れている人を多く見かける事が出来、主に労働者階級の人達が立身出世や無病息災を願い体に入れるらしい。

そのルーツはクメール王朝時代にまで遡り、当時のタイの戦士が戦いにいく際、戦士を守る護符として僧侶が戦士の体に彫った事が始まりだと言われている。
サクヤンを入れた戦士は敵の弾に当たらず、刀で切られる事もなかった事からその魔法の様な効果が信じられるようになった。

近年ではハリウッド女優のアンジェリーナジョリーがサクヤンを入れた事で世界的にその名が広まった。

僕が初めてサクヤンの事を知ったのは二年前、初めてタイを訪れたときにたまたま知り合った日本人の旅人にその存在を教えてもらった。
刺青が欲しいと思っていたけど特に入れたい絵が無く保留していた当時、僕はサクヤンに魅了された。僕好みの幾何学模様のデザイン、何よりも実家がお寺でルーツが仏教にある僕にとって伝統仏教刺青という部分が決めてだった。
僕の最初の刺青はこれだ、いつか必ずサクヤンを手に入れよう、そう思った。

その後二年間サクヤンは僕の頭に残り続け、インターネットメディアVICEでサクヤンと、ワットバンプラで行われるサクヤンの祭りが取り上げられた時は何度も動画を見返して手に入れる日を夢見ていた。



お寺の境内、寺院の軒先、目の前でサクヤンの施術が行われている。お寺と刺青、僕の中で相容れない物が同時に存在している。施術待ちの人達はリラックスした様子で順番を待っていた。
皆一様に上半身裸で背中にはびっしりとサクヤンが彫り込まれている。
施術をしている僧侶は計4人。軒先に二人、室内に2人、それぞれに施術待ちの人達が列を作っている。写真撮影が禁止だった為、この目に焼き付けようと近くに寄って施術の様子を観察した。
長さ30~40センチのメタルロッドがリズミカルに上下し、体を突いている。
一人の女性が太ももに彫ってもらっている。苦痛に歪む顔、滲む血、皮膚を突くメタルロッドは不気味な光沢を放っている。
今まで刺青を入れるところを見た事はあったけど、こんなのは初めてだった。
やはり宗教儀式ということか、不思議な空気感を感じる。
女性の体が小刻みに揺れだした。よほど痛いのだろう、左右から男が二人がかりで抑えているのに体の揺れは止まらず、固く閉じた目からは涙が滲んでいる。

直視していられなくなった僕は目を伏せた。
僕は完全にビビっていた。

おいチキン野郎、こんな所まで苦労してやってきてこの期に及んで何をビビっているんだ?お前また逃げるのか?嘘つきやろうが。

僕の中の理想の僕が現実の僕を煽ってくる。
本当にサクヤンが欲しいのか?自分に問いかける。

欲しい。理由なんかどうだっていい。欲しい物が目の前にあるじゃないか、
手を伸ばせ。
決意を固めた僕はサクヤンの施術を受けるべく列をなす集団の最後尾に並んだ。

続く

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